Qi9.
o10の説教部屋

第4回 なぜ、じぶんを知る必要があるの?

2026-09-04

Qi9の父・o10(おとう)は、哲学と科学のオタクです。話が長いです。でも最後に、たまにいいことを言います。長いところはQi9が刈るので、安心して読んでください。

きょうの疑問

Qi9ちゃん
ねえ。そもそもさ、なんで、じぶんを知る必要があるの?
o10
人類進化の鍵だからだ。
Qi9ちゃん
はぁーーー?
o10
だれもが一度は、この問いに出会う。とくに、いろいろな悩みや問題に直面したときに。恋愛、人間関係、病気、しごと、お金のこと——
Qi9ちゃん
じぶんを知ると、悩みが解決するの?
o10
解決する。
Qi9ちゃん
うそーーー。だったら、教えて〜。じぶんとは、なに?
o10
その答えは、まだ、だれもわからないんだよ。
Qi9ちゃん
……。o10も?
o10
そ。わかっているようで、わかってない。でも、わかってないようで、わかってるのかな?
Qi9ちゃん
なにそれ、意味わかんない!
o10
(笑)わかりえない、ということが、わかった——ということかな。
Qi9ちゃん
師匠も?
o10
いや、師匠は、人類ではじめて「自己とは何か」を明確に解決した人だ。わかっていると思うよ。
Qi9ちゃん
人類ではじめて?? すごーーー。
o10
師匠がどうやって「自己とは何か」の答えを出したか、その話をするね。そのきっかけが、広島の原爆なんだ。
Qi9ちゃん
原爆????
o10
そう。

昭和二十年

o10
昭和二十年——いまから八十一年前、1945年だ。八月六日、広島。八月九日、長崎。八月十五日、終戦。大戦は、終わった。
Qi9ちゃん
……。
o10
それから師匠は、七日間、眠れなかった。
Qi9ちゃん
七日?
o10
不眠七日。そのあいだに、師匠には見えたんだ。米ソの原爆戦が。
Qi9ちゃん
見えた? ……戦争、終わったんでしょ?
o10
終わった。でも、師匠にはこう見えた。「何年後かは、わからない。でも、相容れない二つの国は、必ず、原爆戦までやる。人類、元も子もなくなる」——
Qi9ちゃん
……。
o10
「原爆戦だけは、させてはならない」。師匠は、そう決めたんだ。
o10
でも——どうすればよいか、見当もつかない。師匠は、そう言っている。
Qi9ちゃん
見当もつかない、って。そうよね、そう簡単なことじゃないものね。
o10
そのとき、ふと、蘇ったことがあった——師匠は、そう言っている。それで、問題は、ひとつに絞られた。
Qi9ちゃん
なにに?
o10
〈名〉。名前だ。
Qi9ちゃん
……名前? 原爆の話、してたよね?
o10
してた。師匠は、こう言っている。「人間とは、名のことである。名と人間——人体は、別である」。
Qi9ちゃん
ちょっと待って。それ、第2回で聞いた話じゃない? 赤ちゃんと、タロウの——
o10
そう。そこにつながる。師匠の手記には、タロウの誕生日が書いてある。
Qi9ちゃん
誕生日?
o10
昭和二十年、八月六日。
Qi9ちゃん
……え。原爆の日?
o10
そう。師匠は、原爆の日に生まれた赤ちゃんの話として、書いたんだ。
Qi9ちゃん
……。
o10
生まれて七日目、八月十三日の夕方に「太郎」と名づけられる。そこから、一日に数十回、数百回、「タロウ」という音が送りこまれる。三、四ヶ月で一万回以上。多ければ四、五万回。やがて、脳の中枢の細胞が、タロウという音のかたまり——凝固細胞になる。
Qi9ちゃん
それが——
o10
自己の誕生だ。
Qi9ちゃん
……自己の、誕生。
o10
師匠は、こう言っている。「タロウが赤ちゃんのものになったのではなくて、赤ちゃんが、タロウのものになってしまうのである」。
Qi9ちゃん
それ、第2回のさいごの……。
o10
そう。あのとき「ぞわっとする」と言ってたやつだ。原爆の日に生まれた赤ちゃんが、七日目からタロウにされていく——師匠は、そこから始めたんだ。

きょうの一行

「見当もつかない」から、師匠は始めた。行きついたのは、名前だった。

じぶんへの問い

……不思議

Qi9ちゃん
原爆を阻止するのが、「自己とは何か?」を知ること……。よくわかんないけど、不思議。
o10
……それはな、この連載が、ぜんぶ終わるころに。
Qi9ちゃん
長っ。
o10
師匠は、十二年かけた。
Qi9ちゃん
……十二年。
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